2007/06/09

包み込まれて浮遊したい!?
 ──三十三間堂、智積院

2007.06.09
【京都府】

 豊国廟(ほうこくびょう)(Map)


 秀吉の墓です。
 標高196mの阿弥陀ヶ峰の山頂にあります。
 家康に墓をあばかれ、遺体を掘り起こされ燃やされて遺灰を捨てられた、などとの言い伝えも耳にします。
 そこまでやってようやく、江戸幕府300年の安寧を手にできたと言いたいのでしょうが、どうも近ごろの民族紛争を想起してしまいます。
 相手を根絶やしにしするまで戦いが続くなら、それができない相手同士は子孫が続く限り「それが宿命」とでも叫びながらいがみ合うことになってしまいます。
 それでは、人間はみな戦う宿命に生まれてきた、と言われているようでとても気に食いません。
 一同が京都に集まって、お茶会でもして頭を冷やせたらとも思うのですが、この土地にもとても冷たい一面があるので何とも言えません。そんな話しはまた後日にでも。

 多少、見晴らしがきくかと思っていたら、この季節は若葉が茂っていて見通しがありませんでした。ゼイゼイ……
 もうほとんど、登るのやめて下から写真撮って終わりにしようと思っていたのですが、ちょうどその階段で高校の野球部がトレーニングしており「こんにちは、ここキツイっすよ!」と声を掛けられ「ガンバレー!」なんて言っちゃった手前、引き下がれなくなって登らされてしました。
 右上の写真を撮った場所は頂上目前で、ここまでにはこの4倍もの階段があります(リンク地図の左から「豊国廟」をクリックして拡大表示して見てください)。
 下りは結構急な階段で、踏ん張りが効かず緊張していたのか、足元を確かめる目に力が入るようで、こめかみあたりが痛くなってきました。
 高校生と張り合ってどうするの? でもこれって、反省しても直らないんだよねぇ、何せ「衝動」ですから。
 痛い目に遭う(悟る)までの愚かな修行ということにさせてください……
 565段?(金比羅さんの舞台までは785段とのこと。でも、途中に息つくところもあったし)それを直登だものバテるわけだよ……
 階段を下ると、京都女子大学(付属中・高校)があり、女子高生の中を汗だくで足取りがヘロヘロのおっさんが歩いていれば、変な目で見られていると思いつつも、足がシャキッとしないのです……


 妙法院門跡(Map)


 板葺きの屋根を撮りましたが、何だか分かりませんね。
 内部は公開されておらず、外観だけです。
 三十三間堂(蓮華王院)は、ここ妙法院の管理下に置かれているそうです。
 そんな印象しかなくてスミマセン。まだ、汗をふきふきだったもので……
 案の定、ふくらはぎが痛くなったのは月曜日でした(行ったのは土曜日)。



 智積院(ちしゃくいん)(Map)


 手入れが行き届いて整然としている東山風のお寺は久しぶりで、また結構贅沢だったりするんだろうと、さっさと出てこようと思っていました。
 ところがどっこい、襖絵がまことに見事でした。
 とても力強い線と写実力ゆえ、背景を金箔にすることでやっと調和が取れるとでも言うのか、見事に全体から均質な光が放たれているように思えました。
 庭園も見事で、面する部屋にその襖絵が配されていたとのことで(実物は収蔵庫ですが、部屋には実に安っぽい模写が配されている)、庭園に面した部屋に実物の襖絵が配されていたら、一日中動けないのではないか、とすら思えました。
 今まで美術品に対して何の反応も示してこなかった奴が何で急にテンションが上がっているんだ? と思われるでしょうし、自分でも思いますが、「ここは実物(本物)なんです!」。
 わたしは「違いの分かる男」(これもえらく古い!)と言うつもりはありませんが、レプリカだけを飾っているお寺などとは全然違いますって!
 わたしは何でも、初物に接する時にはできるだけ解説に接しないようにして、出会った時の印象を楽しみたいと思っているのですが、この絵と対峙(たいじ)した時は、本当に興奮しました!
 長谷川等伯(作者)の名も知りませんし、この寺にそんな国宝の襖絵が展示されているなどということも知りませんでした。
 ──ほらまた出た。勉強しますとか言っておきながら何もしてないじゃん……
 加えて、ここが関東の成田山(新勝寺)、川崎大師(平間寺)、高尾山(薬王院)の本山であること知りました(真言宗でも、高野山直系ではないことしか知りませんでした)。
 そんな反省はもう慣れっこで何度でもしますが、有名な襖絵等を所蔵する他の寺院も、現場でなくてもいいからせめて敷地内でそれら「実物」の絵を展示しないと、総合的なイメージを作り損ねてしまい、妙にねじれた印象を拝観者に与えてしまうマイナスの面があるのではないか、と思いました。
 そういう重要とされる絵は、博物館に取り上げられてしまって思うようにならないということも考えられますが、それは国の文化・教育政策として「あるべきところで見せなければ、正しく認識されない」と考えるべきなのではないだろうか。
 そんなことを強く感じさせられた「国宝」の襖絵でした。
 趣味の問題もあるとは思いますが、是非ともオススメです!


 三十三間堂(Map)


 是非とも行ってみたかったところのひとつでしたが、想像以上でした。
 「堂内では静かにおまいりください」と盛んにアナウンスされ、そんなに騒がしいところなのかとちと不安になりましたが、お堂に入って端っこに立った瞬間に、立ちつくしました。
 ズラーッと並ぶ並ぶ金色に輝いた観音様。一番手前の像の精緻さに目を奪われ、その素晴らしさに心奪われた次の瞬間「これと同様の像がズーッと並んでいるのか」と、声にならない感動を心の中でつぶやいていました。
 中央の中尊(巨像)を挟んで、左右に各500体ある計1001体の千手観音がご本尊だそうです(見れば納得)。
 その手前にも28体の仏像が配されており、最初に迎えてくれる雷神像をはじめ、その個性と力強さに視線が釘付けになります。
 どこを見ても決して飽きることはないし、進むにつれご本尊に包み込まれていく感覚を全身で感じられ、他では経験のない安らぎと、至福感を与えてくれます。
 そんな中央の大きな中尊の前で、夜一人で寝てみたいと思いました。
 その夜にはきっと王虫(オーム)の黄金の触手に持ち上げられたナウシカのように、観音様に宙に持ち上げられる夢を見られそう、などと想像したりしました(イマジネーションが乏しくてスミマセン)。
 ──わたくし初めて「空中浮遊」などということを思い浮かべました。観音様たちに抱かれて足が地から離れたとしたら、どんなに心地いいことだろう、と…… ボチボチ、頭の中にまで京都の毒(?)が回ってきたのかも知れません。

 日本で唯一、と唱っているだけあります。
 ここは、是非一度来るべきです。本当、他にはありませんから!
 来て、見て、ご自分で判断されてはいかがでしょうか。

 「堂内では静かにおまいりください」とは、現在は手を伸ばせば届くような場所で国宝を見られるが、何か起きたらこんな近くでは見られなくなってしまいますよ、との警告なのかも知れません。




 京都国立博物館(Map)

 タイムアップで、正門からの写真だけです。
 三十三間堂で時間食い過ぎました。
 また、何かの展示会の時にでも。
 ──奈良の、正倉院展みたいに大混雑かも知れませんが……

0 件のコメント: