2007/08/14

京の奥座敷──貴船(きぶね)

2007.08.11
【京都府】

 貴船(Map)


 メディアでは川の上に座敷を作った「川床」の絵しか見ておらず、あんなにも料亭が軒を並べる観光地だとは思っていなかったので、ちょっと驚きました。
 川幅5mくらいの貴船川全面に座敷を設営して、屋根やよしずで囲ってあり座敷はかなり暗そうで、どこもちょうちんがたくさん下がっています。
 周辺は結構険しい谷筋なので平坦な土地は狭く、川岸に道路が通っているのでイメージとしては

山\料亭〜道路    /山
       \川床/   
(これで伝わるだろうか?)

 ですから、お店で作られた料理をお盆にのせた仲居さんが道路を渡って川床へ向かいます。
 その光景を見ていて、東京湾の屋形船の光景を想起しました。山と海では全然違うのですが、どちらも客受けが良さそうな環境で無理矢理に料理を見繕っているような印象では、同じじゃないかと思いました。
 もちろん、中には本格的なお店もあると思うし温泉のある宿もありますが、全体から受ける印象としては雰囲気と涼しさ(山中ですから市街より涼しいのは当たり前)が売り物の観光地というイメージです。
 そういう商売に関して京都は「エグイ」くらいの印象があります(いまどきは、どこもそうなのかも知れませんが)。
 道すがら「蛍の名所」の看板を見かけました。蛍が棲めるくらいキレイな川かと思いきや、人の多さと水質は反比例することはこちとら学習済みで、ここも前例通りのものでした。行かれる場合は、できるだけ上流のお店を選ばれた方がよろしいかと……

 でも、見聞として行って良かったと思います。


 貴船神社(Map)


 見晴らし用の建物なのですが、川面はお店のよしずに覆われているためこの季節には意味をなさなくなっています。きっと雪の残る冬などは、いい風情なのかも知れません。
 水を司る神様だそうで、昔から雨乞いがよく行われてきたそうです。晴れの願いには白馬が、雨の願いには黒馬が奉納されたものが、馬に代わって木の板に描いた馬が奉納されそれが絵馬の発祥となったそうです(何か、前にもどこかで書いたような気がしますが……)
 右の写真は、水が枯れてて誰も見向きもしませんが、きっとご本尊的なものだろうと思って撮りました。そりゃ、水が流れてなきゃみな通り過ぎてゆくよねぇ。
 ここも陰陽師人気のおかげで若い女性が多いそうですが、縁結びの前に自分のみずみずしさが保てるようにお願いするのが先なのではないかと思いましたが「余計なお世話よ!」の声が聞こえてきそうです……

 この山中で、久しぶりにヒグラシの声を聞きました。
 関東では、ミンミンゼミ、アブラゼミが多いのですが、高槻では「シャーシャー」のクマゼミの大合唱が結構やかましかった7月です。
 報告を聞いてみれば、今年はクマゼミが大発生したそうで、光ファイバーのケーブルに産卵しようとして、通信障害が発生するくらいだったそうです。でも、8月に入って大分静かになりました。
 クマゼミは季節(初夏と盛夏)の違いかも知れませんが、ヒグラシは生息地域が違うということもあり、その鳴き声が聞こえる場所の風情を感じさせてくれる気がして、とても和めました。

 貴船へは「叡山電鉄」(京阪電鉄系列)に乗って行きます。下車駅は「貴船口」で、次が終点の「鞍馬」で鞍馬寺の下車駅です。
 2両編成の路面電車的な車両なのですが、秋の紅葉の季節用に(? でも、そうだと思う)パノラマカー的な構造になっています。
 窓が天井近くまで広くとられていて、片側の座席が窓を向いて配置されています。その席から紅葉を眺められたら最高だろうなぁ、と思うのですが、昨秋書いたと思いますが山手線並の大混雑です。
 この日も、帰りは座れませんでした……

 以前にも書きましたが、京阪電鉄の「おけいはん」(マスコットガール)覚えていますか?
 わたしも久しぶりに広告を見たのですが、現在は五山送り火のポスター(8月16日だそうです。テレビでやってくれないかなぁ?)になっていました。
 何だか見る度に報告してますが、季節感があってコンセプトがとてもいい京都の宣伝広告だと思っています。
 これが日本人の季節感だと思うなぁー。


 帰りがけに(6時半ころ)四条大橋を通りました。お盆休みもあってか、鴨川沿いの納涼床は大盛況でした。
 確かに昼間よりは幾分暑さも引いているとは思いますが、汗をふきふき飲んでいるだろう気温だと思われます。
 これも「雰囲気を買う」ということだと思いますが、そんなやせ我慢も日本人気質として理解できると思います。
 やせ我慢はあまりしたくありませんが、それを「粋」と感じる感性がなくなってしまうと、日本人も結構つまらないものになってしまうような気がします。
 だからなのでしょうか、そんな光景を見ても、まだ「あそこで飲んでみたい」とわたしは思っています……


【追記】
2007.08.16
 五山送り火

 地方版かも知れませんが、NHKで京都・五山送り火(大文字焼き)の中継番組を見ることができました。
 お盆に里帰りした霊魂が「あの世」に帰る姿を見送ろう、そんな行事が京都の街を挙げて行われること(街中はライトダウンしている)に、大晦日の「ゆく年来る年」とは違う「おごそかさ」が感じられました。
 確かにショー的要素はあるものの、あの五つの送り火が目に出来る場所で暮らす信仰心の無い人であっても、身近な先人の霊を祈ることが習慣になることも考えられる訳で、その継続によって「文化」になってきたのではないかと思われました。
 その中継で紹介された(点火の順)
・右大文字:弘法大師堂でおこされた火からすべての行事が始まること。
・妙法(妙と法の文字が2カ所同時に点火される):ある時代に比叡山から迫害を受けた日蓮宗の信徒が生活する集落の人々が、それに負けぬように「南無妙法蓮華経」から妙法の文字を送り火にし、現在もその集落の人々が行事を守っているとのこと。
・舟形:若者たちが担当する最も大きな送り火だそうで、少ない人数で走って点火する。
・左大文字:「大」の文字の書き順に点火されていく。
・鳥居形:点火場所に松明が用意されているのではなく、親火から点火されたものをそれぞれの場所に運んで行って設置する。
など、それぞれのバックグラウンドには「ありがたいお話し」が込められていそうです。
 それぞれの特徴が、この行事の裾野を広げようという努力のたまものであることを知り、それを現代の人たちがしっかりと受け継いでいるという姿に感銘を受けました。

 お盆という行事にこれまでなじみの無かった身としては「これが日本の故郷(原風景)なのかも知れない」と、テレビに見入っておりました。
 ただ本日こちらはこの夏一番の暑さで(明日更新するかは分かりませんが)、午前0時でも30度近くあるような一日でしたので、住んでいるなら別にしても、それを観に行くことは多分ないのではないか、と思います(本当に、その場にいなければ意味がないこと理解していますが)。

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