2008/02/24

禅を表現するということ──相国寺

2008.2.23
【京都府】

 冷泉家(れいぜいけ)(Map)


 冷泉家の名は耳にしたことがあると思われますが、室町時代からの公家の家柄で、明治時代からは伯爵だそうです。何だかまさしく「そんなの関係ねぇ」だよなぁ(もう彼も見かけなくなりましたねぇ)。
 なぜ注目されるかと言えば、膨大な至宝の数々がそこに残されているからです。
 戦国時代に都落ちしている間に、秀吉政権によって現在の京都御所周辺に公家町が完成されてしまい、家康の時代に上洛を許された冷泉家はその外側に家を構えざるを得なかったそうで、現在の京都御苑から道を挟んだ場所にあります。
 ──上写真は、今出川通りをはさんだ御所側から同志社大学方面(北方向)をのぞんでいます。
 明治の世になり、公家町に住む公家たちは天皇に従って東京に移ったのですが、冷泉家には御文庫という蔵があったためお供しなかったそうです。
 天皇不在の公家町は治安のため取り壊され、東京へ移った公家たちの所蔵物は関東大震災や大空襲で失われてしまったのですが、京都に残っていた冷泉家の持ち物だけは無事に現存し、貴重な至宝の価値が注目されるに至ったということです。
 まあ、それを見られるわけでもありませんから、前を歩く男性のように「そんなの関係ねぇしなぁ」としか言えないのですけれど……


 同志社大学 クラーク記念館(Map)

 新聞で修復工事が完了したことを知ったので、のぞきいてきました。
 それにしてもこのキャンパスのレンガ造りの校舎群は立派で、ここまで統一できるというのは、建学の精神というものがしっかりしているからであろうと思います。
 大学のホームページの学部紹介のトップに神学部が出てくることからも、なるほどと思わされます。
 ここは江戸時代薩摩藩邸があった場所で、薩長同盟締結の場であるそうなので、西郷さんや龍馬も出入りしていたのではないでしょうか。
 構内で見かけたトラックに、レントゲン室などで見かける「放射線区域」のようなマークが書かれてあったので、そういう研究もしているのかと思っていたのですが、校章だったようです……(失礼しました)。
 ちなみに、この「クラーク」さんと北海道の「クラーク博士」とは何の縁も無いそうです。


 相国寺(しょうこくじ)(Map)

 前回は到着時間が遅かったので拝観も出来ず「大きな寺院だなぁ」程度の印象で通り抜けてしまいましたが、今回は少し勉強して、ここメインにやってきました。
 ここ相国寺は、足利義満の発願(ほつがん)によって建立された臨済宗相国寺派の大本山で、祖父の尊氏が天龍寺を建てたことに倣ったようです。
 その天龍寺、等持院にも登場した「夢窓国師(むそうこくし)」ですが、ここでも開祖とされています。
 とは言え、そんなに長生きしていたわけではなく、彼の死後に象徴として祀られたそうですが、その夢窓国師の木造が実際に祀られていおり「禅宗は偶像崇拝?」と驚きました。
 禅宗では師弟のつながりを重んじるのだそうで、その証しとして師の寺を取り囲むように塔頭(たっちゅう:覚えてますか? ここで使いたいためにこれまですり込んできたんです!)寺院を建立するならわしがあるそうです。
 金閣寺と銀閣寺は、この相国寺の塔頭寺院なのだそうです(これを伝えたかったわけです)。
 ってことは、この寺は相当格が高そうに感じますが(確かに京都五山の第一位だ、二位だと言われますが、それも当事者の義満が決めたそうなのでどんなもんかと思います)、金閣は義満の、銀閣は義政の山荘であったものをそれぞれの没後に寺とすることで、初代将軍尊氏が師と慕った夢窓国師を祀った相国寺の塔頭寺院としたそうです。
 でも何故、尊氏が建立した天龍寺ではなく義満が建立した相国寺なのか?
 については憶測ですが、師弟のつながりを大切にする理由から、夢窓国師が祀られている相国寺にしたのではないか?
 もしくは、京都における禅宗寺院の体系確立に相国寺が大きな役割を果たしたことによるものか?
 天龍寺は後醍醐天皇の菩提を弔うために建立されたもので、足利家というよりは天皇家の縁が強いから?
 とも思ったりしますが、これ以上はこのレポート時点では把握できていません……(いい加減だなぁ、ちゃんと勉強せんかい!)


 敷地内にある「承天閣美術館」で現在「相国寺の禅林文化展」が開催されていて、それを見るのが一つの目的だったのですが、ちょっとぶっ飛びました。
 いわゆる水墨画の掛け軸なのですが、こんなにも質素で枯れているような絵(これはわたしの表現)を床の間等に飾り、それを見て満足できる精神を持つ人とは「とても豊かな心の持ち主」なのではあるまいか? と思わされ、ちょっとたじろぎました。
 極めつけは展示用に移されている、鹿苑寺(金閣寺)の玉座(天皇の席)の床の間に描かれた「葡萄図」の水墨画(リンク先の2枚目)です(背後に対面するように飾られている芭蕉図(リンク先の3枚目)も素晴らしかった)。
 あの絵を背にして天皇が座るわけですよ!
 感じ方によっては「相当景気の悪い時代だったのかも」と、その実務面を不安しする見方もあるかも知れませんが、わたしは一国のトップが水墨画を背にして執務を行うことに、とても潔さを感じたのですが(装飾の豊かさで力を誇示するのではなく、本質で向き合おうとする姿勢があったのではないか? と思えました)、実際のところはどうだったのでしょう。
 しかし、禅を表現するということは、もうこれ以上そぎ落とすものはないところまで突き詰めた、その描き手の心象に映った本質を描くことにほかならないのではないか?
 そんなインパクトを受けてしまい、展示室なので大きな声は出さずとも「変な人?」のように、何やらブツブツつぶやいておりました。
 もしあの場所(玉座)で酒が飲めたなら、何もつまみはいらないんじゃないか?
 ──玉座では酒は飲まぬものなのか? 「下々の考えそうなことじゃのう」と、一笑されてしまうのでしょうか?
 で、酔っぱらって二日酔いで、次の日仕事にならなかったりしちゃうのかなぁ? などと妄想をしておりました。
 「まさか、お上におかれましては、そのようなことは……」

 これまでも水墨画に接したことは何度もありますが、このように心打たれたことは初めてです。
 やはり禅寺の中で観るという環境的な要因と、ここ数週間続いた禅寺めぐりでの「修行?」(確かにそういった印象はありました。自分でも「何で禅寺ばかり回っているんだろう?」と)の成果が、そんな感じ方をさせてくれたのではないか、と思います。
 何れにせよ「禅を表現するということ」に心動かされたことは事実なので、とてもいい経験をしたと思っています。


 瑞春院(雁の寺)(Map)


 水上勉の小説『雁の寺』の舞台になったとされるお寺です。
 相国寺の塔頭寺院で公開されているのはここだけだから人が集まるのか、存在自体に人気があるのか分かりません。
 団体がいたせいもあるかも知れませんが、何か観光地みたいになってました。
 同氏著書『金閣炎上』と併せてツアーみたいなものがあるのかも知れません。
 どちらも読んでいないと思われ、映画では若かりし頃の若尾文子の足が印象に残っているのは、この作品だったか?
 こんな話題しかない上、話しが広がらずにスミマセン。(『はなれ瞽女おりん』は覚えているんですが……)



 右上は、上御霊神社(かみごりょうじんじゃ)に飾られた生け花。
 京都で最も古いとされる御霊祭が行われるところです。(どこでもそうですが、自称No.1は多くてもう調べるのやめました)

 右写真は、茶道資料館に隣接する本法寺の土塀で、瓦を挟みながら土が盛られていった制作過程がよく分かります。









 裏千家(Map)


 上写真は茶道の裏千家「今日庵」の門になります。まるっきり分かっていなかったのですが「それで表千家はどこ?」と思っていたら、すぐ隣にありました。
 この日は何か催し物があったようで、表千家「不審庵」の門には立派な黒塗りの車が横付けされ、偉そうな人が出てきたりで、ちょっと写真を撮れる雰囲気ではありませんでした。
 着物姿の方が出入りしているのですが、そんな男性の所作ってどうしてもオカマっぽく見えてしまうのは、わたしだけでしょうか?(怒られるー)
 京都の三千家(表と裏千家が嫡流で、武者小路千家は分家になるのだそうです)は、千利休の後妻の連れ子の系統らしく、本家は堺千家になるのだそうです(聞いたことないんですが……)。
 どうも付け焼き刃的ですみません、関心も薄いもので以上になります。

 右写真が、わたしの出身地です。
 それは冗談ですが、珍しい町名を見つけたので紹介したかっただけです。
 ほんの200m程度の路地に面した家々だけの町のようですが、新しい町内掲示板なんかもあったりします。
 京都は昔からこのような小さな町の集合体であったと思われ、秀吉の時代には1300町を数えたと言います。
 現在どれだけの町名が残されているのか分かりませんが、全然関係ないヤツが迷い込んで来て写真を撮ったりするかもしれないので、残せるものなら残してもらいたいと、願っております。

 近くに白峯神社という蹴鞠を伝える神社があり、現在はサッカー選手やチームが祈願に訪れる名所になっています(京都サンガもJ1復帰ですからご利益があったということでしょう)。
 ちょうど今晩サッカーの韓国戦があるのでお祈りしましたが、ちょっと願いが足りなかったようです。

 道を挟んだ向かいに、先週紹介した本阿弥光悦(ほんあみ こうえつ)の屋敷跡の石碑があります。


 わびすけ(Map)


 同志社大学の前にある喫茶・食事処です。
 前回いただいきとてもおいしかった「いもねぎ」ですが、中途半端な時間だったので今回はパスしました(結構ボリュームあります)。気軽に入れるお店なので是非いかがでしょうか。
 暖かい店内から表を眺めていると、雪が本降りになってきました。
 雪は室内から眺めるに限りますね……

 わたしにはとても「禅を表現するということ」はできないのですが、気分的に今回は全部モノクロにしました(いつかやりたいとは思っていたのですが)。
 願望はあってもなかなか出来ないと思われますが「禅の空気に浸る」の端っこくらいはかじれたような気がしているので、とりあえずの目標は達成です。
 禅寺めぐりも次週で終了の予定なので、もう少しお付き合いを。
 ──と思ってましたが、2週に分けようかと思い始めてきました……

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